blog du I'llony 世界一好きな花屋といってもらえるように 芦屋と南青山とパリに店を構える花屋アイロニーオーナー谷口敦史のブログ

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2019年2月13日

タニグチ日記からの抜粋

今日は社内で最近ほぼ毎日社員に向けて書いているタニグチ日記から抜粋です。

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今日は日本からのSさんという方の依頼で、
モンテさんにミシュラン一つ星継続のお祝いを届けてきました。
スペースを考えて通常の装花は休んで場所を譲りました。

ボンジュールっ!とドアを開けて入っていくと、
明らかなボリュームの違いに、わぁ、すごいっ!と驚いてくれて、
名前を告げると、わぁっと奥さんがよろこんで、すぐにシェフに伝えに行きました。
このときになんか既視感を感じたのですが、そのときはわからず、
そうこうしているとシェフが出てきて、
いつものあの寡黙な感じで、おおぉ、と微笑んでいました。

Sはねぇ、修行していたときの仲間なんですよ。
としみじみとしながらぼつりぼつりと話してくれました。
奥さんが、すかさず、いっつも料理の話しだしたらケンカするねんなぁ。と。
シェフが、彼はね、スペイン料理なんですよ、
それでどっちが正しいかみたいなことでいっつもケンカになるんですよ。と
奥さんが、Sさんも、日本でミシュランの一つ星とったんですよ。と
おれにそういうことを説明しながら、ふたりともSさんのことを
温かい感じで思い浮かべているのがわかりました。

花のことを説明して、帰り際ドアのところで、
また来週と挨拶しようとして、さっきの既視感を思い出しました。

もう20年近く前のことです。
25歳でアイロニーを立ち上げたばかりで、芦屋の店もまだなくて、
神戸の岡本のマンションの一室でホームページだけを立ち上げて
フリーランスで仕事をしていたときのことです。

フリーランスとは名ばかりで身内や友達から少しの注文をもらって、
ときどき花の仕事をさせてもらって練習をするという感じでした。

唯一仕事らしい仕事といえば、
今は芦屋のメゾンドタカというレストランが、
昔ベルブランというレストランだったころに、
契約していたウェディング専門のフローリストが
女性で教会の装花は大変だからと
おれのところに振ってくれていたのがあるくらい。
とはいえ、それも大した利益にはならず
夜中芦屋の東山町にあるFOOLというカフェバーのキッチンで
朝まで働いてそのまま仕入れにいって水揚げして寝て、
昼に起きて、たまーに入るレッスンをしたり、ギフトの出荷をしたりしていました。


そのころは、ほんとに食べていけなくて、
当時デフレの最中で、松屋とか牛丼屋が牛丼並280円になって、
昼飯はそれまで五百円だったのに二百八十円になったやん!と、
ほんとにうれしかった時代でした。笑。

まぁそういう暮らしは東京時代から慣れていたので、特に辛いこともなかったのですが、
花の仕事がなかなか良くなっていかない。いい花が仕入れられない。
仕事量も少ないからスキルも伸びない。
生活のためのバイトの時間が煩わしく感じたり、
なかなか前に進まないなぁと感じていた時でした。

当時自作の学級新聞みたいなHPのオーダーフォームから、
ごくたまーに、知らない人からオーダーが入ることがありました。
ほとんどを発送にしていたのですが、
見ると東灘区のレストランで近かったので自分で届けようと思いました。
男性から、レストランの何周年だかのお祝いでした。
中華だったかな、何料理だったかはもう忘れたけど、
まぁまぁ広い店内で、午後4時くらいに届けたので、
店は閉まっていて、仕込みの最中という感じでした。

こんにちは、お花のお届けです。と入っていくと、
奥さんが、誰から?と聞いてきて、名前を伝えると、
下の名前を呼び捨てにして、たかし?
そしてすぐに厨房に向かって、嬉しそうに
おとうさん、たかし花送ってくれたわ。と呼びかけました。

おくさんが俺に、昔にバイトしてた子なんですよ。
あの子花なんて送れるようになったんやなぁ。。
とめちゃめちゃ嬉しそうに話してくれました。

なんでかなぁ、負けん気が強いので、苦労してたり、
辛いという感覚は感じていないつもりだったのですが、
停滞感みたいなのは感じていたからかなぁ。。
このときに鼻の奥がツーーンときました。
泣いたかな、あとで店出てからちょっとだけ泣いたかなぁ。
いや泣いてない。泣いたかな。うんだいぶ泣いたな。

じつは、花を届けて泣いたのは、これがすでに2回目で、
1回目は東京でバイトをしていたとき、それはまたいつか話すとして、
そのどちらも、
花が人の心に届いた瞬間を見せてもらって、
やっぱりこの仕事は世界で一番幸せな仕事だなぁと再認識させてもらって、
今はうまくいってないけど、この仕事はやめられないなぁ。
と思わせてくれたオーダーでした。

今日のオーダーはなんだかそれを思い出したのでした。
俺らはいつも、発送が多いから、
こういうのを目の当たりにすることは少ないんだけど、
見えてないところで、たくさんこういうことが起こっています。

みんなが毎日毎日繰り返し繰り返しやってくれてる仕事で、
ひとつひとつが特別な花になって、いろんなドラマを起こしています。
しんどくなったり、つまんなくなったりしてやめちゃう人も多いけど、
おれは世界で一番いい仕事だと信じてやみません。

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Auther

florist jardin du I'llony
creative director
Atsushi Taniguchi

谷口 敦史
1975年3月31日生まれ

芦屋と南青山とパリに店を構える花屋アイロニーのオーナーフローリスト。 独学ながら自然のバランスと花のもつ色気をコンセプトにしたデザインが多くのブランドに認められ店内装花やイベント装花などを手がける。 企業への花をつかった商品企画や広告への花写真の提供など幅広く活動。 自身の撮影による写真集FLOWBULOUS(フラビュラス)は現在ISSUE3まで発刊し累計45000部突破。

多くの人に世界一好きな花屋がある人生の豊かさを感じてもらうことを目標に邁進中

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